夏へのトンネル、さよならの出口 感想
- 2019/07/23
- 19:57
夏!トンネル!青空!入道雲!海!高校生!表紙から読み取れる舞台装置は160kmの豪速球。でも、手前の赤いサンダルとサイン色紙みたいなのなんだろう?
こういう青春作品ってヒロイン実は訳ありでラストに消えるイメージなんだよなぁ。ちょっとしたSF要素がある青春物はヒロインが消失してSFファンタジー要素が無いやつはだいたいよくわからない病でヒロインか死ぬ(偏見)
著者/八目迷 イラスト/くっか
あらすじ
「ウラシマトンネルって、知ってる?そこに入れば欲しいものがなんでも手に入るんだけど、その代わりに年を取っちゃうの―」。
そんな都市伝説を耳にした高校生の塔野カオルは、偶然にもその日の夜にそれらしきトンネルを発見する。
―このトンネルに入れば、五年前に死んだ妹を取り戻すことができるかも。放課後に一人でトンネルの検証を始めたカオルだったが、転校生の花城あんずに見つかってしまう。二人は互いの欲しいものを手に入れるために協力関係を結ぶのだが…。かつて誰も体験したことのない驚きに満ちた夏が始まる。
確か、選挙行って用事全て終わらしたのが夕方くらいでそこから読み始めたと思う。
速読には自信があるのでだいたい1時間くらいで読み終わったぜと思って時計見たら22時半になっていた。これがウラシマ効果…月曜へのトンネル、さよならの日曜…
ぶっちゃけ刊行予定見た段階では青春物は食傷気味で買うか迷ってたけどこれは買ってよかったと思った。勝手に危惧していたヒロインが謎の病で消えたりする類の作品ではなかった。とにかくそういうのではない。上手く表わせないけど強いて言うなら高校2年の夏を走る抜ける作品。
トンネルに入ることで欲しいものが手に入る。代償は自分の時間だけが流れに取り残されてしまうこと。うーん、ポジティブに考えれば未来にタイムスリップなんだが冷静に考えると生活できないよねっていう。トンネルを抜けるとそこは100年後であった。とかドラえもんクラスじゃないと対処できんわ。
キャラ同士の何気ない会話にラノベっぽさが無くて逆にそこがよかった。会話が良いんだから全編良いに決まってる。特に塔野と加賀の会話が良かった。花城を助けに行く直前の会話とか超青春だわ。青春過ぎて20代の人間がダメージ受けるレベル。はー、つら。
作品通して熱いチェリオ推し。ライフガードとかグレープソーダは目にするけどチェリオのコーラは見た事無い気がする。気になってチェリオ公式ページまで見に行ったらやっぱり初見のデザインだった。チェリオのコーラが気になってしょうがないんだが売ってない
花城が言ってた足を止めたら不安が襲いかかってくる感覚っていうのは凄くわかる。何かに没頭したり進んでる時は見たくものを見ないで済むし、向き合わなきゃいけないものを避けれるし、なにより自分に今は目標に向かって行動しているという大義名分が出来る。いやまあ、花城がここまでマイナスに振り切って言ったセリフとは思えないけど…こんな砂浜のラムネ瓶みたいな作品読んだのに出てくる感想がマイナス過ぎるだろ…
メチャクチャ尖ってたと思ってた人物が実は普通の人間で、逆になんでもない、ありきたりだと思ってた人物が実は過去のトラウマに縛りつけられていて。そういう設定好み。特に日常からトラウマに囚われているより無自覚に囚われている方が凄く好き。なんでか知らんけど。
いやーしかし、結構チョロかったすね。でもまあ、普通の高校生なんてチョロチョロだからな。大体の男子高校生とか女子と目が合っただけで勘違いして気になり始めちゃうだろ多分。実際はこっちがチラチラ見てるから視線に気づいて訝しんでるだけなのに。まーたナチュラルにトラウマで自傷してしまった…
総評は買って良かったし読んで良かった。今後も何回も読み直すんじゃないかと思った作品。ひと夏の青春物はたまにこういうどデカい当たりがあるから困る。そして、この感覚を糧にハズレにぶつかり続けるんだよなぁ。