半分の月がのぼる空 感想
- 2020/07/01
- 20:05

「日和ちゃんのお願いは絶対」を読んでいたら、読みたくなった作品。
別にこの作品は全くセカイ系ではないけれど、主人公の男の子が無力で、ヒロインが死を前に奮闘するっていうのがセカイ系の作品に似通ってるなと思った。
電撃文庫のレジェンド的な名作。ラノベのオススメは?って聞かれたら、これかハルヒか、ミミズクと夜の王ら辺を薦めとけばよかった時代があった。
っていうか、逆にこれが名作じゃないなら、世の中にある名作、全部名作じゃなくていいよ(極論)
今のラノベと、この時代のラノベってベクトルが結構違うなぁと思う。
キャラを動かす為にストーリーがあるか、ストーリーを動かす為にキャラがいるか。全部が全部そういう訳じゃないし、別に善悪の話でもないけど。ただ、趣が違う。時代の流れって奴ですかね。知らんけど。
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入院先の病院で出会う17歳の王道ボーイミーツガール。シンプルな設定故に、素材と技で勝負して、見事に打ち勝っている。塩で食っても旨い天ぷらみたいなもん。塩で食っても美味い天ぷらは天つゆで食うともっと美味いけど。
ただ、この作品に関しては塩で無双してるんだよ(意味不明)
裕一は無力で未熟で難病の女の子に大怪我させちゃったりするんだけど、等身大の学生ってこんな感じだった気がする。お兄様とかイマジンブレーカーの持ち主みたいなのは絶対高校生じゃねえ…いつも余計な事ばっかり考えて、心に残った大事な人の言葉に影響されて。
そして、どこかに無茶苦茶なエネルギーを持っている普通の男子。普通に男の子だから、捻くれてはいないし、え?なんだって?で誤魔化さないし、説教もしない。自分の気持ちにはすぐに気付いて、惚れた子の事ばっかり考える。
エネルギーはあるけど、その使い方も向ける方向もわからないから、病人の里香を連れて飛び出しちゃったり無謀なこともできてしまう。これが青春。
里香はツンデレで…ツンデレっていうよりツンドラで最早ドラゴンだろ。パシらせて文句言うとか美人にしか許されない特権。かなり無茶苦茶なワガママっぷりだけど、裕一はなんやかんや許しちゃうのが惚れた弱み。
自分の死に対して自覚があるから、悟りのような強さを見せている時もあるけど、堪えきれなくなってしまう事もある、普通の女子。
普通の男女が出会っただけで物語は始まるんじゃよ。そして、しっかりと引き込まれる物語になっている。もしかしたら、何でもない些細な日常って他人から見ると物語になるのかもしれない。
心理描写が丁寧だから、入り込んじゃう作品。丁寧だから、裕一の考えをなんとなく理解して、起こす行動に納得してしまう。
何年振りに読んだかわからないけど、名作は名作だった。
よかった…「なんであの時、あんなにハマったのかわかんねえ。昔の俺アホでしょ」的な老化をしていなくて。